矯正歯科治療とは
矯正歯科治療とは
そもそも、矯正歯科治療とは何でしょう?
矯正歯科治療とは、歯並びや噛み合わせが悪いとき、一定の力を加えて歯を正しい位置に移動させる治療です。
では、なぜ歯は動くのでしょうか。それは、歯には力を加えられると動く性質があるからです。この力を利用して行うのが矯正治療です。
悪い歯並びや噛み合わせは病気ではありませんが、虫歯や歯周病になりやすく、咀嚼機能や発音などに悪い影響を与えます。また、見た目の美しさも損なわるためコンプレックスを感じる方もいるほどです。
こうした問題は、矯正歯科治療を行うことで改善することができます。それだけでなく、噛み合わせたときに均一に力が加わるので、歯に負担をかけずに済みます。また、顎関節や口の周りの筋肉などを良い状態に保つことができるため、バランスの取れた顔立ちを作れます。
歯は一生使うもの。だからこそ、時間をかけてでも矯正歯科治療を受けることをお勧めいたします。
5つの治療目標で、審美性・機能性を実現
矯正治療の目的は、正しい噛み合わせと歯を支える歯周組織の健康、顎関節の位置、そして美しい口元のラインを作ることにあります。これらはお互いに影響し合い、全てを改善してこそ初めて安定した噛み合わせと整った歯並びを手に入れることができます。
当院では、理想的な矯正治療を行うための5つの治療目標を掲げております。それらを一つひとつクリアしながら、理想の歯並び・噛み合わせへ導きます。
<5つの目標>
1.歯並びの変化
第一の目的は「歯並びを整える」ことです。八重歯や出っ歯、すきっ歯などの乱れている歯並びを、歯の位置を少しずつ動かしながら理想的な歯並びに整えていきます。これは、前歯だけでなく奥歯を含めた全ての歯を整えることを意味します。
2.噛み合わせの変化
第二の目的は「正しい噛み合わせ」です。上下の歯がしっかり噛み合い歯の機能が充分に発揮できるよう、噛み合わせを治します。また、歯にすき間があったり、上下の顎にずれがあると「サ行」「パ行」などの発音が不明瞭になることがありますが、噛み合わせを治すことで改善できます。
3.顔立ちの変化
第三の目的は「顔立ちの印象の改善」です。1本1本の歯の位置をきちんとコントロールすることで「口元が出ている」「笑った時に歯茎が気になる」などといった口元や顔立ちの見た目が解消できます。
4.歯の周りの組織の変化
第四の目的は「歯根を歯槽骨の中に戻す」ことです。通常、歯の根(歯根)は骨(歯槽骨)の中に埋まっています。これに対し、乱れた歯並びは骨からはみ出し、歯周病の原因にもなっています。そこで矯正治療で歯根を骨の中に戻します。問題を解決するだけでなく歯茎のラインを揃え、歯周病のリスクを減少させる上でも重要です。
5.顎の関節と歯の並びの関係性の変化
第五の目的は「歯と顎の関節を正しく機能させる」ことです。ヒトの歯は、肉食動物と草食動物の両方の歯の機能を備えており、顎関節が肉食動物の行う上下運動と、草食動物特有の円運動ができる形状をしています。
顎関節がずれて歯並びが悪くなると、歯や顎関節に負担がかかり、噛み合わせなどの機能面に悪影響を与えます。このように顎関節と歯が本来の役割を発揮できるように歯並びを治すことが、矯正治療の目的です。
スプリント治療~安心、安全に治療をするために~
歯を動かす治療に入る前に、診断の一つのステップとして噛み合わせの状態、下の顎の位置、顎関節(がくかんせつ)の状態をチェックする場合があります。
程度の差はありますが、ほとんどの患者さんは顎関節をずらして上下の歯を噛み合わせています。また、口を開け閉めした時に、カクッと音がしたり痛みが出ることがあります。この顎関節の状態をできるだけ良い状態にした時、下の顎はどれ程ずれているのか、上下の噛み合わせのずれはどの程度なのか本当に理解できます。
小さい子供でもすでに顎関節のずれが大きく、また骨の吸収変化が起きている場合もあります。関節円板がずれていることもよくあります。この場合、すぐに矯正治療で歯を動かして大丈夫か確認する必要があり、その時スプリントを用います。
<治療前>
下顎の先端部分(下顎頭)が下の方に大きくずれています。これでは顎の関節が常に緩んだ状態になっています。
この状態から歯を動かす治療を始めると、治療中に下顎のずれが現れたり治療終了してからずれたりします。後から気づいても手遅れです。
これがスプリントです。
<治療後>
スプリント治療により、下顎頭が上の方へあがり、関節窩に下顎頭がしっかりおさまっているのがわかります。
この状態から歯を動かす治療を始めます。下顎のずれがはっきりしているため『安心、安全』に治療を進められます。
主訴 | どこで噛んでよいかわからない |
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年齢 | 30代 |
性別 | 女性 |
治療内容 | スプリントの装着 |
治療期間 | 約6ヶ月 |
治療費用(概算) | 100,000円 |
リスク及び副作用 | 装着していないと効果がない。 |
矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について
- 最初は矯正装置による不快感、痛み等があります。数日間~1、2週間で慣れることが多いです。
- 歯の動き方には個人差があります。そのため、予想された治療期間が延長する可能性があります。
- 装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院等、矯正治療には患者さんの協力が非常に重要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
- 治療中は、装置が付いているため歯が磨きにくくなります。虫歯や歯周病のリスクが高まりますので、丁寧に磨いたり、定期的なメンテナンスを受けることが重要です。
また、歯が動くと隠れていた虫歯が見えるようになることもあります。 - 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることがあります。また、歯ぐきが痩せて下がることがあります。
- ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
- ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
- 治療途中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
- 治療中に「顎関節で音が鳴る、顎が痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあります。
- 様々な問題により、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。
- 歯の形を修正したり、咬み合わせの微調整を行う可能性があります。
- 矯正装置を誤飲する可能性があります。
- 装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
- 装置が外れた後、保定装置を指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。
- 装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)や虫歯の治療(修復物)などをやり直す可能性があります。
- 顎の成長発育により咬み合わせや歯並びが変化する可能性があります。
- 治療後に親知らずが生えて、凸凹が生じる可能性があります。
加齢や歯周病等により歯を支えている骨が痩せると咬み合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になることがあります。 - 矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。